お決まりの日々?

モモの節句でございます。

月『アルジェの男』/『Dance Romanesque』 6回目(千秋楽)の前に

5回見て、やっとジャックとジュリアンが対照的なんだと、関係性が分かってきました。
私がジュリアンさんばっかり見ていたからで、ジャックを演じた役者さんのせいではありません。


以下、完全な私見。
(楽を見る前に、友人に送ったメールの元。楽後の感想は後ほど)

<ジャックとジュリアン>

ジャックさんは、お前と俺はひとつ影なんだ、とか、どこが違う!と言うけど、
アルジェのスラム街の孤児で、ワルという状況設定は同じでも、真反対に違う。

ジュリアンには、彼の美学があり、どんな状況であってもそれを守ろうとする。
それが彼の誇りであり、彼のまわりから際立たせる要因でもある。

・弱いものいじめはしない
・殺人と強盗はしない
・義に厚い。
・自分は損をしても、仲間の世話をすることをやめない。
彼は、過去の行動から、自分のことを「悪党」だと自覚しているが、
悪党でも上等、上の上を目指している。向上心とプライドがある。

気持ちの優しい彼の傍は居心地がいいから、彼の周りには人が集まる。
アルジェでも、パリでも。
ボランジュさんも、このままスラム街に埋もれさせるには惜しい、と
容赦なく強引なスカウトをする。
スレた環境でも、自分に誇りを持てる生き方をしているところ、
向上心にあふれているところ、難局にあたっても逃げ出さず、
自分ひとりで状況を改善させる瞬間を待っているところに、かつての自分の姿を見たのだろう。

ジャックはその反対。
生まれついての孤児という境遇と「悪党」と言われる一味行動をしていたことは、
ジュリアンと「どこが違う?」かもしれないが、中身がまったく違う。

ジャックには美学がない。
その場の状況や気持ちに、その場のそろばん(損得勘定)に流される。
悪党でも下の下、の位置に甘んじている。
何も信じちゃいないし、ジュリアンを除いて誰も信じてはいない。
彼は自分自身の可能性も信じていない。というより、自分自身というものがない。

信用がならない彼は、アルジェでもパリでも、一人ぼっち。
アルジェでは人気者のジュリアンに絡み、ジュリアンが彼をかまう結果、
仲間内でのポジションを得ていていたけれど、
ジュリアンがいなくなって、ずるくてきたないやり方をよしとするジャックに、
人望があるわけもない。
(このあたりは、ミシュリューさんと共通している。なるほど、ミシュリュー‐ジャックラインがつながるはずだ)

あんなに団結していたチームも頭を失ってばらばらになった。

ジュリアン団は解散し、サビーヌも一人ぼっち。

ジュリアンがいなくなったことで、自分のいる環境が悪化したことにイライラし、
これもジュリアンのせいだ、と苛立つ。
パリにまで追いかけていくのは、自分自身は信じられない彼が、
ジュリアンは彼を見捨てはしない、何をしても受け入れてくれると、
確信に近い強さで思っており、それによって得られていた安堵感を、
奪われたことへの怒りゆえだと思う。

アルジェに恋人はいたけれど、彼のジュリアンへの激しい執着の前には無いに等しい。
あっさり捨てたか、苛立ちがDVの形であらわれたことで愛想をつかされたか。

その後、一人ぼっちのサビーヌの弱さにつけこみ(彼女を脅して同居に持ち込んだのなら、
ジュリアンへの弁解の台詞が「仕方がなかったの」にはならず、「ジャックに脅されたの」になるはず)
ジュリアンへの嫌がらせと実益を兼ねてサビーヌのひもになっている。
額に汗して、まじめに稼ぐような人間じゃないからね。

支出が増えたら、サビーヌをより金が稼げる店に移して、貢がせる。
(お前が金がつくれないって言うなら、ジュリアンにお願いするしかねえよなあ、
 とサビーヌを脅したのではないかと想像)


有力者に見込まれて、引き抜かれたのがジャックだったら、
アルジェの仲間はあんなに荒れなかった。
だって、ジャックは得なほうに流れる性分で、仲間を裏切るのは当たり前だもの。
パリに行くといっても、恋人がびんたをくらわせるぐらいで、
気にも留められなかったと思う。

でも、ジュリアンが仲間から抜ける、彼らを裏切るのはありえないことだったから、
「信じていたのに」と、みんな激しく動揺した。


ジャックは、自分を認めない世の中に怒っている。
ねたみ、そねみの塊。
その対象はいつも特定の一人で、ジュリアンの罪深さの甚だしさが愉快で思えるほどだ。

ねたみ、そねみで凝り固まったジャックと、
そういうネガティブな感情から自由であるジュリアンの対比がまた面白い。

ジュリアンは、ボランジュの秘書仲間、何でも持っているミッシェルに対しても、
ねたんだりすることもない。
だからこそ、ミッシェルはジュリアンのことを気持ち良い人間と思い、
彼の出身を知らされていても、好きになる。
彼のマイナスから生まれていると思われる部分も、
自分には無い“良いもの”を持っている、と「惹かれて」しまう。
(もちろん、ミッシェルが偏見などで人を評価しない、大変素直な気持ちの良い
 青年であることも、大きいのですが。それを見抜いてジュリアンの秘密を、
 話したボランジュさんの眼力がすごいのか、ジュリアンを紹介したときの、
 ミッシェルの食いつきぶりが、アルジェでのボランジュさん自身を思わせるほどに、
 激しかったのかどうかは知らない。想像すると楽しい♪)


<ジュリアンは優しい>

ジュリアンは盲目、という弱さを持ったアナ・ベルの、持っているものを利用する気はあっても、
彼女に女性としての幸せをできるかぎりの誠実さで与えようと決意はしていたと思う。
「弱いものをいじめるのは、悪党でも下の下だ」と、美学を持った人だもの。
(彼は美学を撤回しなければ立ち行かないような窮地に陥ったときは、
 そのために、非常な決意と、理由付けを必要する、不器用なほどに生真面目な人です)

目をつぶれば、目の見える私でも感じられる領域が広がる。
触れられた部分から、気持ちが流れ込む。
ましてや見えない世界のアナ・ベルが、彼に身をゆだねたいと願えたのは、
(スカートを握り締めるというのはそういうことでしょう)
その後、二股かけられたと分かってもうらめないのは、
彼がアナ・ベルといるときはいつも誠実で、彼女に徹底した優しさを贈りつづけたから。
(教会のシーンのアナ・ベルは目が見えているのかと思わせるほどのしっかりとした歩き方で、
 改善したほうが良いと思う)
ジュリアンは、アナ・ベルに教会で「見られて」いたことを知らないし、
病気が再発したため「お会いできません」としか思ってなくて、死んだことも知らないはず。
(婚約に象徴される、確かなものもなかったし)

アナ・ベルは、ジュリアンの「真実」を知っても、彼を恨めなかった。
むしろ一時でも、自分が望むことも許されなかった夢のような時間を
与えてくれたジュリアンへ感謝の気持ちだった。
この安堵を喜びを知った今、知らなかった自分には戻れない、
もう、ピアノに象徴されるような気持ちの高揚は無い。
ジュリアンがいないのだから。
自分にはもう、あのような未来は来ない、
自分の今までの人生が、いかにつまらないものであったか。
知らなければ、それを続けていけたけれど、
あの高揚を知ってしまい、忘れることもできない今、
私はその空虚さに耐えることができない。

知らなければ生きていけたのに。
でも、あの夢のような幸福を忘れることも、思い出にすることもできないから、
彼女だけのジュリアンで身を満たして、湖に浮かんだのだと思う。

アナ・ベルと「別れ」ても、死んでも、
ジュリアンは政治的なダメージを食らっていない、どころか、二等書記官に昇進している。
彼の嘘偽りない優しさが、彼を一時的にでも破滅から救った。

ボランジュの政敵、ミシュリューと濃厚なとつながりがあるシャルドンヌ夫人の大切な姪、
彼女の唯一の肉親を弄ぶようなリスキーなことを、
あのくそまじめで賢いジュリアンがするわけないやん。
なんだかんだ言ってもちょっかいを出してくるエリザベートは、
ジュリアンのことを気になっている、それも好意的になのは、
うわさになるぐらいにバレバレなんだから、強引に迫れば、
腕の中に倒れこんできそうなのに、それをしないのは、
恩人であるボランジュ夫妻の顔を立てているから。

彼は、エリザベートに見切りを付け、本気でアナ・ベルの相手をしていたはずだ。
エリザベートが悔しがる様子を見たかったのに、
しおらしく「愛してます」と言われちゃって、の予想以上の大成功に、
おもわずうっひょーと悪い顔(にやり)が出たのだろうけど、
(にやりは下手の端ほうからだと、エリザベートの陰になって分かりにくいかも。
 ジュリアンさんのお顔の左半分が、分かりやすくにやっとしています)
有頂天の後、どうやって関係の始末をつけようか、と、悩んだと思う。
ボランジュさんに相談すれば、娘の態度が悪かった、
と、先方との関係を修復しようと、必死に動き回ってくれそうだけど。

もし、彼がアナ・ベルを利用しようとしていたなら、
彼の口付けを受け、脱力したアナ・ベルという状況に、
してやったりの得意げな表情を、浮かべたはず。
しかし、彼は終始、アナ・ベルに集中していた。
その後、謝罪し愛を告白したエリザベートに腕を回す時は、
彼女に集中しておらず、「にやり」していたのと対照的。
手つきも、晩餐会のエスコートのときよりおざなりで、
ラストのサビーヌをもう二度と離すものかとしっかと抱きしめた時とは、
手の筋の浮きかたまで違う。

こういう分かりやすい演技をしてくれるところも、霧矢さん好きやわ。
また、その差が、気持ちから出たと感じる自然なところもいい。
アナ・ベルいいな~~、サビーヌよかったね~~と思ったけど、
エリザベートはうらやましくもなーんともなかったもん。


ジュリアンは本当に優しい人。
パリの下町にあるマルトの店で、新しい踊り子、と紹介された裸同然で踊っている女性に、
「ふーん」、まあ、今の俺のかかわる世界じゃないな、
とさほど興味なさ気な視線を流していたのに、
彼女と目が合って、サビーヌか!と気づいた瞬間の、あの痛々しい表情。
その後も、表面では取り繕いながらも、とても辛そうなのが伝わってきて、
観客が涙目になってしまう。
(アルジェのボランジュ邸でも、「落ち着きなさい」と言われたほど、
 動揺を隠すのが下手な人だった。人間5年じゃ変われないよね)

いてもたってもいられず、すぐに暇を申し出て、まっすぐに楽屋に向かう。
どうしてこんなところにいるんだ。
君はアルジェでそれなりに幸せに暮らしていたんじゃなかったのか?
こんな店で働かなければならないほど困窮しているなら、なぜ、声をかけてくれなかった、
今からでも僕が君のためにできることはないだろうか、と心配で心配でたまらないという風なのに、
ジャックと暮らしている、と聞いて、そういうことか、心配して損した、
「お幸せに」と言葉を残して立ち去ろうとするのが、また、若い。
こんな純朴さからも、とてもアナ・ベルを利用してポイできるずるさがあるとは思えない。

サビーヌを利用しまくったジャックなら、平然とやる。
でも、そんな人物をシャルドンヌ夫人は大切な姪に、決して近づけない。


<優しさゆえにがんじがらめになるジュリアン。内的爆発、そして解放>

5年の間おとなしかったのに、急に自分の周りをちょろちょろしだしたジャックを
このままにしてはおけない、とジュリアンが思ったのは、
自分から金をむしりとったり、陥れるならともかく、
大恩人で尊敬するボランジュを、失脚させようとしたのが許せなかったから。
(このあたりの思考回路がサビーヌと似てる)

ジュリアンは、美学に、義理や人情や愛情や、得た立場や身分などといったもので縛られ、
どんどん身動き取れなくなっていくのに、
ジャックがまったく自由な根無し草なのも対照的。

そういった、いろいろな大切になってしまったものに幾重にもがんじがらめにされ、
まじめすぎる人が、己の大切にしていた美学を曲げないといけない状況に
追い込まれるから、見ていてとても辛い。

しかしそこで、自分にとってもっとも大切なもの、宝に、
彼の中で爆発が起こったことで気づき、開放される。
すばらしい。
目に見えるわかりやすい「黄金」より、ずっとずっと大切なもの、
自分を満たしてくれるものは、サビーヌだ。
すっきりと清冽に輝く瞳の美しさも見事。
これがカタルシスでなくて何?(エリザベート調で。ボランジュさん夫妻に導いて欲しい)

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たまり(ょ)

Author:たまり(ょ)
『マイメロ』の柊恵一さん中心感想や、奈良大淀病院事件の傍聴記録を書いていました。

現在は、感想や日記を時々。
スポットライト(好きな人しか目に入らない視野狭窄)状態で、片寄ってます。

何となくの傾向インデックス
・「某Oさん」や「花柄の君さま」などと表記させていただいている声優さんのファンなので御出演作♪
『おねがいマイメロディ』シリーズ(終了)
・『電王』以降のスーパーヒーロータイム
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