お決まりの日々?

モモの節句でございます。

「サンセット大通り」

7月8日の千秋楽に行くことができたので、当日のノートから写し書き。(当日の記事にもちょこっと書きました)

主演の「時代に取り残された昔の大女優」が綺麗過ぎることによる弊害、
あるいはそのことによって表現される新しい世界かについて書きます。


<魅力的なマックス>

この館には狂気が満ちている。

サンセット大通り。
最盛期を過ぎて、地平に消えるのを待つ。
その名の通りにある古い館には、
パラマウント映画が盛りを迎えた今では、過去の遺物である無声映画の時代、
世界中から愛された女優、ノーマ・デスモンド(安蘭さん)が、白髪の執事マックス(鈴木さん)一人を置いて住んでいた。

若者、ジョー・ギリス(田代さん)は、一幕で、二幕で、この館から飛び出すが、
ノーマから逃げるためじゃない。

一幕では、恋愛の対象外であるはずの「オバアサン」を可愛いと思ってしまった自分の心に芽生えた感情が怖くて逃げた。
二幕では、マックスの狂気から逃げ出そうとした。

ノーマは、昔の、彼女にとって「良き」時代にしがみついている、時代遅れのカワイソウなおばさんだ。
年を取った母親が、あなただけが頼りなのと子供(特に娘)にすがりつく惨めさ(適切な言葉と思えないが、
私の少ない語彙の中に他に見つけることができなかった。失礼)、
ぬいぐるみに依存する子供が、お気に入りの「ともだち」を取り上げられた時に、
四肢をめちゃくちゃに動かし、叫ぶ姿がかさなるような。
ノーマがそのような庇護欲を刺激するイタイケな存在でしかないことは、
彼女の信奉者であった、セシル・B・デミル監督(浜畑さん)の振る舞いが示している。

パラマウントの撮影現場に押しかけたノーマを、デミルは、時代の変化についていけず、
今の世の中に適応できない軋みで痛めつけられているノーマを、これ以上傷つけたくないと、
デミルは彼女の今も生きている過去の幻想を受け入れて、やさしく帰した。

ノーマは、変わった時代を受け入れられず、
彼女が世界の大スターであった過去の栄光が今も通用する、作られた幻想の中に身をおいている。

自分が受け入れられないという状態に強い拒絶をしめし、そのたびに自殺を図るような
弱いメンタリティーのノーマにとって、
彼女にとって厳しい現実から目を背けられる幻想は、命の安全を保障する場であるが、
これで得をするのは彼女ではない。

彼女が現実社会に適応できないことで得をするのはマックスだ。
マックスは、ノーマを、無声映画からパラマウントへと流れていく外部の時間から遮断した。
彼女は、彼によって、狂った時間の中に軟禁されている。
彼女が時代遅れであるという情報を隠蔽し、第三者を語った熱烈なファンレターを送り続けて、
今も彼女の人気は普遍であることの確証にしている。

ジョーは、マックスが形成したノーマ・シェルターから逃げ出した。
若い、脚本家という同じ夢、共通項を持つ娘、
今を見ている健全なベティ(彩吹さん)の存在はきっかけに過ぎない。
彼はマックスを、理屈でなく怖れた。
だから逃げ出した。それは、死の恐怖をも上回った。

マックスが望む全盛期のノーマ、彼が彼女にプロポーズした当時の姿を、
彼が作り出した狂気に酔っている彼女は、演じ続けている。

静かな激しさ。マックスの冷たい炎、でも見た目を裏切る恐ろしさで、触れるとじわじわ浸蝕してくる、
対象を深くえぐっていく。

マックスは、ノーマの愛を受けるジョーに激しく嫉妬すると同時に、
しかしこの老い先短くない健康な若者が、素晴らしいノーマを愛するようになり、
彼が作り出した虚構の世界を、彼が死んだ後も保持してくれないかと願う気持ちの板ばさみになっている。
ノーマに愛されるジョーが憎い、追い出したい、
でも彼のような存在は、マックスが作りあげたノーマシェルターを維持するには必要だ。
マックスに残された時間はそう長くなく、次のジョーが現れるまで待てないかもしれない。

ジョーのいないノーマと二人っきりの穏やかな生活を望むか、
ジョーを後継者にするか。
悔しいかな「恋人」を得て生き生きとおしゃれに励むノーマは、
マックスと二人でいた時分よりはるかに魅力的であり、
彼女が倒れたという電話に息を切らして戻ってきたジョーが、彼女の魅力に参るのは時間の問題かと思われた。

苦しむマックスは、他のどの登場人物よりも人間な魅力にあふれて見えた。


<ノーマが美しすぎることからの物語解釈>

舞台上で、他キャストから説明されるノーマは、時代に取り残された老女優、
とっくの昔に引導を渡され、容色も衰えているのに、それに気付いていない哀れなお婆さん。
美輪明宏の歌「老女優は去り行く」の、さらに後のようである。
しかし、舞台上のノーマは、最後のシーンでは見事なそれでも豊かな銀髪ではあるけれど、
それまでの場面では、黒く豊かな頭髪であることを疑わせもしない容貌で、
エステが必要なようなタルミもないし、パラマウントの現役女優よりずっと綺麗で、
現役でない理由を
「言葉は要らない、瞳で語るだけでいい」という演技における彼女のこだわりが、
パラマウントに熱狂する観客の需要の外だから、以外に見出すことができない。

この時代の50歳と今の50歳は違い、今の70歳ぐらいなのだろうが、
この舞台の現在の40代前半(昔の30代前半?)にしかみえないノーマは美魔女だ。

愛するジョーに綺麗と思ってもらいたい、とおしゃれと自分磨きに非常な努力を続け、
ジョーにちょっとでも喜んで欲しいと無邪気にプレゼントを考えるノーマの心は、恋する少女のまま。

これで見かけがかつては美人だったのだろうけれど、
大きい目の弊害で落ち窪んだ眼窩から、深い皺をフレームに眼球だけが飛び出してギラギラと光っているところに、
舞台メイクそのものが施され、皺でよれたファンデーションを、しょっちゅうパフで修復している、
痩せているほうが綺麗という思い込みによる弊害で、骨と皮だけの身体であったら、
色ボケババアと好意を向けられたジョーが気持ち悪くなる気持ちも、
そのような朽ちた(失礼)身体で、今でも現役で主役として通用する、世界中が待っているという妄言を、
頭までおかしいと受け入れられないのもわかるが、
このノーマは誰よりも綺麗で、彼女の妄言はありではないかと錯覚させられるし、恋愛対象として大有りだ。

役をもらうためなら何だってする、と有力者を誘惑するが、その相手を実はバカにしている、
パラマウントの現役女優のえげつなさに比べると、
ノーマの執着は純真なもので、可愛く見えるほど。

ジョーが、サンセット大通りの館から逃げ出す理由が、
この舞台からは、ノーマの束縛に寄るものとは思いがたい。
現に、一幕の最後、ジョーに捨てられたと自殺未遂を起こしたノーマの元に、
彼は飛んで帰り、愛を誓っていることから、
彼もノーマに庇護欲は相当に掻き立てられている。
かわいそうと思ったら、惚れたってこと、というけれど、
この舞台上のジョーとノーマは、いい関係に見えた。

ジョーはノーマじゃなく、マックスが作り出している狂った世界から、
死を代償にしても逃げ出したかったのだと思った。
それほどに、マックスのノーマへの病的な執着と、手段を選ばぬ束縛は怖かった。


新進気鋭の映画監督と、ティーンエイジャーの女優という、マックスとノーマが出会った時の
年齢差と、平均年齢の男女差から、大事件無く時が流れると、マックスが先に死ぬ。
今までのように献身的な世話を続けられる時間が、後どれぐらい彼に許されているのか、
マックスは老いを、ノーマ以上に恐れていたと思う。

芝居のラスト、ジョーに疎まれたショックで精神を別世界へ解き放ったノーマに、
マックスは、安心を覚えただろう。
狂った彼女の心には、現実の社会の言葉は届かない。
ジョーの殺害について問われても、今の彼女には答えられない。
心を病んだ人として扱われる。
彼女の心は永遠に自由になる。誰にであれ、傷つけられることは無くなった。


舞台のチケットは友人が取ってくれました。ありがとうございます。
この友人と何度も一緒に芝居を見に行っているけれど、
一度として視線の対象が一致したことが無い面白い関係で、
芝居の後にもらったメールでは、友人の視線の先には鈴木さんではなく安蘭さんがいた様子。

見に行くきっかけは、安蘭さんだから、聴ける歌だろうで、
もちろん安蘭さんも観ていたのだけれど、途中から鈴木さんマックスの不気味さに目を離せなくなりました。

ツボがとても近い人の話も面白いし、
価値観は似ているところにあるけれどツボがちがう、だけれどその違いを不快に思わない人との話は、
別の楽しさがあって、嬉しくなります。次の機会もよろしく~~♪

オーケストラも素晴らしかったです。これが生演奏の良さと堪能しました。
東京宝塚劇場のオケと代わってくれ~~!

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Author:たまり(ょ)
『マイメロ』の柊恵一さん中心感想や、奈良大淀病院事件の傍聴記録を書いていました。

現在は、感想や日記を時々。
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・「某Oさん」や「花柄の君さま」などと表記させていただいている声優さんのファンなので御出演作♪
『おねがいマイメロディ』シリーズ(終了)
・『電王』以降のスーパーヒーロータイム
宝塚歌劇感想
・他ドラマなど
・医療破壊に関しては涅槃の境地にいけたらイイナ♪
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